正直不動産を現役不動産屋がレビュー【8巻】原状回復の説明

正直不動産を現役不動産屋がレビュー【8巻】原状回復の説明

正直不動産の内容がむずかしくて楽しめない。

「実際にそんな事あるの?」などの疑問に現役の不動産屋がお答えします。

もりやま
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今回は、10巻P75に出てきます。
原状回復についてご説明いたします。

ストーリーの大まかな流れ

民法改正(2020年4月1日以降)により敷金で利益を出している悪徳家主に改正後の民法の説明にあがる、永瀬財地(山下智久さん)と月下咲良(福原遥さん)のやり取りについて説明いたします。

もりやま
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約140年ぶりの民法の改正が行われました。

現代に合わせた法律に変更させたのです。

敷金の返還に関するルールの明確化

敷金とは借主が貸主(大家)さんに入居期間中に預けておく保証金のようなお金の事です。

原則として退去時には敷金の全額が返還されますが、退去時までに滞納した家賃等があれば敷金から差し引かれて返金されます。

しかし改正前の旧法では原状回復の基準があいまいで、故意や過失とは関係のない、経年劣化による修理代まで敷金から差し引かれてしまうことがあり、トラブルが多発いたしておりました。

今回の民法改正(2020年4月1日以降の契約)では、退去時に家賃の滞納があったとき、敷金から支払うことが明記されました。

また、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債務が生じることと、その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であることなどが明確化しています。

原状回復義務のルール

賃貸借契約が終了して退去する際、借主は賃借物を元の状態に戻して返還するのが一般的です。

この原状回復に関することは、これまでは1998年に国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に従って行われており、原状回復に関する事は法には定められてはいませんでした。

ガイドラインには原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することと定義されており、このガイドラインの内容を民法に盛り込むかたちで明文化されています。

これにより、原状回復を行う必要があるかどうかを判断する基準が、以下のように法で定められたことになります。

原状回復義務を負わない場合(通常損耗・経年変化に当たる例)
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(いわゆる電気ヤケ)
・地震で破損したガラス
・鍵の取り替え(破損、鍵紛失のない場合)
原状回復義務を負う場合(通常損耗・経年変化に当たらない例)
引っ越し作業で生じたひっかきキズ
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備などの毀損
・タバコのヤニ・臭い
・飼育ペットによる柱などのキズ・臭い

通常使用による損耗や経年劣化などについては原状回復義務を負わないことを明確化したことで、原状回復に関するトラブルの抑止が期待できるようになります。

もりやま
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分かりやすく説明すると、原状回復義務は、借主の故意や過失がある場合のみ費用負担をしなくてはいけないと言う事になります。

詳しくは、下記の法務省と国土交通省HPでご確認下さい。

法務省:賃貸借契約に関するルールの見直し 
国土交通省:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について 

契約中の修繕に関わるルール

賃貸契約中のキッチンやトイレ等の水漏れや雨漏り、エアコンやインターホンや給湯器などの設備故障、洗濯機置き場や風呂の排水管の詰まりなど日々の生活に支障をきたすような不具合があった場合でも、建物や設備の所有者は貸主(大家)さんですので、借主(入居者)は勝手に修繕(修理)を行うことはできません

しかし、こうした不具合を伝えたのに関わらず貸主(大家)さんの都合ですぐに修繕してもらえず、借主(入居者)では一切修繕できないとなると不便なうえ被害が大きくなってしまう可能性がありましたが、改正前の民法では入居者が修繕を行った場合、どこまでを大家さんに請求できるのか明確なルールはありませんでした

そこで、民法改正後では、修繕が必要であることを伝えたのにもかかわらず、貸主(大家)さんが相当な期間修繕をしてくれなかった場合や、次の台風までにどうしても屋根の修繕をしたいなど事態が急迫しているときは、大家さんの対応前に入居者が修繕(修理)しても、修繕費の請求を貸主(大家)さんにできるというルールになりました。

なお、雨漏りや水漏れなどを発見したときの通知義務は入居者側にあります

故障や不具合を知っていたのにかかわらず通知せず、被害が大きくなってしまった場合の損害賠償責任は入居者ですので必ず不具合を発見した場合は、すぐに報告いたしましょう。

賃借物の一部滅失等による賃料の減額について

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

民法第 611 条第 1 項

改正民法で「賃料の減額を請求することができる」という部分が「減額される」という強い表現になりました。

改正前の民法では賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合など入居者からの請求があった場合のみに賃料減額の対応を行っていたところが、請求がなくても当然に減額されるということになりました。

しかし、「賃貸物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」と判断される条件などは明確化されておらず、どの程度減額する必要があるかの規定がありません

ですので、本サイトでは賃借物の一部滅失等による賃料の減額については、ここまでの説明にとどめておきたいと思います。

もっと詳しく知りたい方は、国土交通省の主催する「賃貸借トラブルに係る相談対応研究会」が発表した「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」を参考にして頂けたと思います。

もりやま
もりやま

改正後の民法は、2020年4月1日以降の契約及び再契約分に対して効力を発するものです。

2020年3月31日以前の契約は、改正の民法が適用されることに注意して下さいね。

※本ブログは、あくまで個人的な意見及び感想です。

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