
線下補償料の基本と実務の全体像
はじめに
「補償金がもらえると思っていたのに受け取れていない」「勝手に線が通っている」――
線下補償料に関するトラブルは、土地所有者にとって身近でありながら非常に見落とされがちです。
この記事では、現実によくあるトラブル事例と、それに対する具体的な解決策を紹介します。
トラブル①:無断で送電線が通っていた
- 過去の所有者と契約していたが、現所有者はその存在を知らない
- 電力会社が「既に権利を得ている」と主張し、補償交渉を拒否
解決策: 測量図や登記を確認し、線下に該当するか明確に把握。契約書の有無を事業者に照会し、再交渉を検討します。
トラブル②:契約書が紛失されていて内容が不明
- 補償契約の存在があいまいになり、支払い停止の可能性も
解決策: 電力会社や鉄道会社へ契約記録の照会を依頼。契約再締結によって内容を明確化するのが望ましいです。
トラブル③:名義変更がされておらず補償金が入らない
- 相続や売買後も、旧所有者に補償金が振り込まれ続けるケース
解決策: 名義変更届を提出。登記事項証明書と本人確認書類を添付して、補償金の受取人変更を申請します。
トラブル④:補償料の支払いが突然止まった
- 契約の更新未了、設備の撤去、契約期間満了などが原因
- 事業者からの事前連絡がないケースも
解決策: 契約書の条項(契約期間、更新条件)を確認。事業者に状況を問い合わせ、必要に応じて交渉を行います。
トラブル⑤:補償内容に納得がいかない
- 近隣よりも金額が著しく低い
- 契約時に説明不足のままサインさせられた
解決策: 周辺の補償実績を調査し、金額の妥当性を検証。納得できない場合は不動産鑑定士を通じて交渉を試みます。
トラブル⑥:送電線が撤去されたのに制限が残っている
- 補償金支払いは終了したが、建築制限などの用途制限が残存
解決策: 撤去証明を取得し、契約解除または地役権の抹消登記を交渉。土地利用の自由を取り戻すための手続きが必要です。
トラブル対応時の基本姿勢
- 口頭交渉ではなく、必ず書面でやりとりを残す
- 相手が大手インフラ企業でも、土地所有者としての権利は守られる
- 不動産鑑定士・司法書士・行政書士などの第三者専門家を活用する
まとめ
- 線下補償は「交渉力」と「契約書の管理体制」が鍵を握る
- トラブルを未然に防ぐには、契約の有無・内容を正確に把握すること
- 問題が起きた場合でも、冷静に対応すれば補償を回復できる可能性は高い
線下補償料の基本と実務の全体像