
線下補償料の基本と実務の全体像
はじめに
「補償の対象になりそうな土地があるが、どう進めればいいのか分からない」
そんな疑問を持つ土地所有者のために、線下補償料に関する契約の手順を実務の流れに沿って解説します。
本記事では、通知から支払いまでの流れを、契約書の種類や注意点を含めてわかりやすくまとめます。
線下補償における契約の全体像
- 電力会社や鉄道会社など、インフラ事業者との民間契約が基本です。
- 契約形態は以下のようなパターンがあります。
- 覚書
- 使用承諾書
- 地役権設定契約(登記される場合もある)
- 契約書には補償金額、支払い方法、期間、更新の有無などが明記されます。
ステップ1:通知・打診が来るケース
- 事業者からの書面または訪問によって交渉が始まることがあります。
- 新設工事だけでなく、既存の送電線等に関して契約未締結のまま使用が継続されていた場合も対象となることがあります。
- 簡単な口頭説明やパンフレットだけで契約を進められないよう注意が必要です。
ステップ2:対象面積と内容の確認
- 土地家屋調査士や測量士による現地調査が行われることがあります。
- 送電線や架線、支線の真下に該当する範囲が計測され、補償対象面積が決まります。
- 支線や地上の設備も補償対象に含まれるケースがあります。
- 図面付きの説明を求め、納得いく形で内容を確認しましょう。
ステップ3:補償内容の交渉
- 補償金額や支払い方法(年額・一時金)の提示を受けます。
- 提示額に納得がいかない場合は、増額交渉も可能です。
- 近隣地の事例を調べたり、不動産鑑定士に評価を依頼することで交渉力が高まります。
ステップ4:契約書の作成と締結
- 補償交渉がまとまったら、契約内容を必ず書面で明記します。
- 内容には以下の項目が含まれることが一般的です。
- 使用目的(例:送電線・支線の通過)
- 補償金額と支払時期
- 契約期間と更新条件
- 再評価・再交渉条項の有無
- 地役権設定契約の場合は法務局で登記手続きが必要です。
- 一時金の場合は「永久使用」とみなされることが多く、将来的な制限にも影響するため注意が必要です。
ステップ5:補償金の支払い
- 契約書に基づき、指定口座への銀行振込が行われるのが一般的です。
- 支払い後は、領収書や確認書類を大切に保管しておきましょう。
- 年額払いの場合は、契約に従って毎年定額が振り込まれます。
- 補償金は「贈与」ではなく「損失補償」としての収入扱いとなり、税務申告が必要です(詳細は別記事にて解説)。
トラブル防止のために注意すべき点
- 古い契約書や口頭合意しか存在しない場合は、再契約の検討を。
- 契約内容の書面化は、法的保護と後々のトラブル回避につながります。
- 設備の撤去や立退きを含む複雑なケースでは、弁護士や司法書士の関与が望ましい場面もあります。
線下補償料の基本と実務の全体像