
線下補償料の基本と実務の全体像
はじめに
「線下補償料はいくらもらえるのか?」
これは土地所有者にとって最も関心の高いテーマの一つです。
実際には補償金の金額は一律ではなく、土地の種類・利用制限・契約条件などによって大きく異なります。
本記事では、相場の目安と金額の決まり方について、不動産実務の視点からわかりやすく解説していきます。
補償金の決まり方の基本構造
- 補償金は基本的に「対象面積 × 単価」で概算されます。
- 単価は地目や利用制限、心理的要因(電磁波や景観など)によって調整されます。
- 補償の支払い形態が「一時金(買い切り)」か「年額払い」かでも金額は大きく異なります。
土地の種類ごとの相場の目安
農地(田・畑)
- 年額:数千円〜数万円/10a(1,000平方メートル)
- 一時金:10万円〜50万円前後の事例が多い
山林・雑種地・原野
- 面積が広くても単価は低め
- 一時金:3万円〜30万円の範囲が一般的
宅地(建築制限あり)
- 制限の影響が大きく、高額補償になる例もある
- 一時金:30万円〜100万円以上になる例もある
実際には、補償対象面積が10〜50平方メートル程度のケースが多く、用途制限がどの程度かかるかによって交渉結果が変わります。
補償金額に影響する要素
- 送電線の種類(超高圧・高圧・低圧)と位置(真上か隣接か)
- 送電線の通過本数や方向(複数本・斜め通過など)
- 支障の程度(建築不可、農作業制限、電磁波リスクなど)
- 土地の利用計画(将来の開発や分譲などが困難になるか)
支払い方法と契約パターン
一時金方式(買い切り)
- 契約締結時に全額を一括受領
- 「永久使用」契約とされることが多く、将来的な再交渉は不可
年額方式
- 毎年一定額を継続的に受け取る
- 契約期間終了時に再交渉の余地あり
- 名義変更時には手続きが必要(相続や売買時)
期間付き契約(10年・20年など)
- 年額方式と同様だが、定期的な見直しができるため交渉力が生まれる
具体事例
- A県の農地:高圧送電線が通過する10aに対して、15万円の一時金で補償契約
- B市の宅地:建築不可の制限あり、80万円の一時金で補償合意
- C町の山林:支線が1本通過、3万円の一時金補償で合意
これらの金額は公表されていないため、近隣地の事例や過去契約をもとに交渉することが重要です。
注意点
- 補償金の相場は非公開であり、事業者によって差が大きい
- 契約書の有無や交渉経過によって、同一条件でも補償額が数倍違うこともある
- 固定資産税評価額や路線価とは必ずしも連動しない
補償金の算定に迷ったら
- 地元の土地家屋調査士・不動産鑑定士に依頼して査定を受ける
- 同一送電線や鉄道設備が通る近隣地の契約状況を調査
- 事業者から提示された金額が妥当かどうか、過去の契約と比較する
線下補償料の基本と実務の全体像