線下補償料とは?

線下補償料とは?

はじめに

「上空に送電線があるけど、お金なんて一度ももらったことがない」
そんな違和感を感じたことはありませんか?

実はその土地、電力会社や鉄道会社によって無断で“占用”されている可能性があります。
そして、その補償として本来受け取れるはずなのが「線下補償料(せんかほしょうりょう)」です。

この補償金は、知らないと一円ももらえないまま数十年放置されるケースも多く、逆に正しく交渉すれば、数十万円から数百万円の一時金や、継続的な年額収入を得られる可能性があります。

しかし、制度の存在すら知らずに無視していると…

■「黙って使わせてきた」と見なされ、補償の権利が消える
■ 将来の建築や土地売却に重大な制限が残る
■ 税務や不動産取引でトラブルになる

など、知らなかったでは済まされないリスクが多く潜んでいます。

この記事では、以下のような疑問に答えながら、

● 自分の土地が補償対象になるか?
● なぜ補償されないことがあるのか?
● 相場はどれくらいか?
● どんな契約にサインすべきか?
● 税金や名義変更で注意すべきことは?

土地所有者が損をしないために知っておくべき「線下補償料の全知識」を、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。

線下補償料とは何か

線下補償料とは、送電線・鉄道架線・支線・電柱などが個人や法人の土地上空または地表の一部を占用することに対して、インフラ事業者(主に電力会社や鉄道会社)が土地所有者に支払う損失補償金を指します。

支払者と受取者の関係

支払う側は、以下のようなインフラ事業者です。

  • 電力会社(関西電力・東京電力など)
  • 鉄道事業者(JR・私鉄など)
  • 場合によっては通信事業者(NTT等)

対して、補償を受け取る側は、該当地の登記上の土地所有者です。使用貸借や借地権者ではなく、「登記名義人」に対してのみ原則支払われます。

対象となる土地の種類と条件

対象となるのは、

  • 宅地
  • 農地(田・畑)
  • 山林・雑種地・原野など

といったあらゆる地目が含まれます。特に、上空の一定の高さを恒常的に使用されており、その結果として建築や営農などに制限がある土地が対象となります。

契約形態に関する区別

線下補償料には複数の契約形態が存在します。特に注意すべきは次の3つです:

● 地役権設定契約

  • 登記可能
  • 恒常的使用の権利を与える代わりに一括補償となるケースが多い

● 使用承諾書(使用同意)

  • 登記はされない
  • 使用条件に期限を設けた「更新型」の補償契約

● 黙示の使用

  • 契約書が存在せず、長期間の無償使用により補償請求が難しくなる可能性あり
  • この状態で放置されている土地は非常に多く、最もリスクが高い

これらの違いを正確に理解しないまま、安易にサインすると将来の土地利用や売却に大きな影響を与える恐れがあります。

線下補償料が発生する法的・実務的背景

線下補償料の根拠は、「土地の利用価値が制限されることに対する対価」です。たとえば送電線の直下では、次のような制限が実際に発生します。

  • 建物の高さ制限(火災や感電リスクへの配慮)
  • 農作業中の安全リスク(感電・落下物など)
  • 支線や鉄柱による作業動線の妨げ
  • 地価の下落(心理的瑕疵)

このように、土地所有者が本来の活用を制限されるにもかかわらず、その対価が支払われていない場合には、補償交渉が正当とされる余地があります。

民法による位置づけ

  • 民法第207条:「土地の所有権は、その上下に及ぶ」
    → 地表・地下だけでなく、上空も所有権の範囲内とされており、占用には正当な根拠が必要です。
  • 民法の地役権(第280条以下):
    → 恒常的な通過や架設に関しては「地役権の設定」が適切な法的根拠とされ、登記が望ましい。

公共性の高い事業であっても、私有地を使う以上、対価なく使用することは原則認められず、裁判でも補償請求が認められた例があります。

補償を受けることの意味と注意点

補償金は一見ありがたい収入に見えますが、「交渉せずに放置すること」「契約書の内容を理解せずに同意すること」には大きなリスクが伴います。

黙示の使用扱いのリスク

  • 補償請求を長年行っていないと、「無償使用を黙認した」と解釈され、時効や承諾の主張を受けやすくなります。
  • 一度この状態になると、補償請求の再開には交渉や法的措置が必要になります。

契約形態が将来に影響を与える

  • 地役権を設定し、一括で補償金を受け取った場合、その土地は今後恒久的に制限付きになります。
  • 将来、建築計画や再開発、売却を考える場合には、こうした制限がネックになることもあります。

一括払いと年額払いの選択

  • 一括は「終わった話」とされやすい
  • 年額払いは「更新交渉」や「名義変更」による管理が煩雑になるが、柔軟性は高い

こうした点を踏まえ、目先の金額だけで判断せず、土地の将来価値や活用計画を踏まえた選択が重要です。

よくある誤解とそのリスク

  • 「昔に契約したからもう補償はない」
    → 契約書が存在しなければ、再交渉余地あり。時効中断の可能性も含め検討価値あり。
  • 「勝手に線を通された=違法」
    → 現実には、黙示の承諾が成立していると事業者側に主張されることが多く、立証責任は所有者側にある。証拠の確保が重要。
  • 「売買時に補償も自動的に引き継がれる」
    → 契約に「名義変更条項」や「通知義務」が明記されていない場合、旧所有者に支払いが継続されることも。事業者への手続きが必須。

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