

更新料の「相場」はどれくらいが妥当なのか。提示額が高いのか安いのか。最初に知っておくべきなのは、相場の“考え方”と、地域・契約条件で変動する要因です。本記事では、一般的な目安、地域差、契約期間ごとの違いを整理し、数字を使った事例でイメージできるように解説します。
借地権更新料とは?
借地契約の更新時に、借地人が地主に支払う一時金のことを指します。もっとも、借地借家法に更新料の規定はなく、
法律上の一律の義務ではありません。実務では、契約条項・当事者の合意・地域慣行・過去の支払い実績などを踏まえて金額が決まります。したがって、同じエリアでも契約内容や個別事情により「相場感」が上下する点に留意が必要です。
借地権更新料の一般的な相場(5〜10%の根拠)
実務でよく用いられる考え方は、次の“型”です。
更新料 ≒ 借地権価格 × 5〜10%(事案により3〜10%の幅)
ここでの「借地権価格」は、対象土地の時価(近隣成約や査定など)に借地権割合(エリアごとに設定)を掛けて求める値です。
この目安が用いられる背景には、長期にわたる使用利益や過去の合意慣行を金銭で調整するという実務上の合理があり、裁判外の交渉でもこのレンジが叩き台になりやすいという事情があります。
- 基礎値が上振れする要因:高い地代水準、残存期間が長い、増改築承諾の履歴、好立地など
- 基礎値が下振れする要因:老朽建物、接道・形状の難、過去に高額の一時金を支払済み等
※「5〜10%」はあくまで
実務目安であり、契約条項・協議経過によって適正レンジは変わります。
地域差のある相場(都市部/地方)
相場感は、土地時価や借地権割合、地代水準の差によりエリアで変わります。都市部は土地時価・地代ともに高く、
同じ%でも金額が大きくなりやすい一方、地方は%は同じでも絶対額が抑えられる傾向にあります。
区分 | 土地時価の傾向 | 借地権割合の傾向 | 更新料の傾向(同一%前提) |
---|---|---|---|
都市部(例:東京23区・大阪市中心部) | 高い | 高め(例:70%前後のエリアも) | 絶対額は大きくなりやすい |
地方都市・郊外 | 中〜低い | 中〜低め(例:50〜60%台) | 同率でも絶対額は抑え目 |
なお、道路付け・角地/奥行・形状補正・用途地域などの個別性も金額に影響します。机上の%だけでなく、
現地要因を必ず加味してください。
契約期間ごとの違い(20年/30年)
更新間隔が長いほど、一度の更新で調整すべき「使用利益」が大きくなるため、交渉の叩き台が上振れしやすい傾向はあります。ただし、これは一律の規則ではなく、
最終的には契約条項・地代水準・過去の一時金履歴・地域慣行などの総合判断になります。
- 20年更新:レンジの中でも中位に収まりやすい
- 30年更新:レンジの上限寄りを主張されがち(交渉余地あり)
いずれの場合も、過去の更新時の金額・合意書面が重要な参照点になります。書類は必ず整理しておきましょう。
事例紹介(大阪市・東京)
例1:大阪市の住宅地(概算例)
- 土地時価の目安:3,200万円
- 借地権割合:60%
- 借地権価格=3,200万円 × 0.6 =
1,920万円 - 更新料目安(5〜10%)=1,920万円 × 0.05〜0.10 =
96〜192万円
例2:東京23区の住宅地(概算例)
- 土地時価の目安:7,000万円
- 借地権割合:70%
- 借地権価格=7,000万円 × 0.7 =
4,900万円 - 更新料目安(5〜10%)=4,900万円 × 0.05〜0.10 =
245〜490万円
ポイント
- %は目安。
契約条項・地代・残存期間・過去の一時金で上下します。 - 数値の妥当性は、査定書・近隣成約・借地権割合・地代水準など
客観資料の束で裏づけるのが交渉の近道です。
相場に関するよくある質問(FAQ)
Q. 「5〜10%」は全国どこでも同じですか?
A. いいえ。あくまで実務目安で、エリアの相場、地代水準、契約条項や過去の一時金履歴でレンジは変わります。
Q. 地主の提示が相場より高く感じます。どうすれば?
A. まずは「土地時価×借地権割合」で根拠を可視化し、査定書や近隣成約などの資料を添えて協議します。溝が大きい場合は専門家の同席を検討してください。
Q. 地域差はどれくらい影響しますか?
A. 同じ%でも土地時価が高い都市部は
絶対額が大きくなります。借地権割合の設定や地代水準の差も影響します。
Q. 20年更新と30年更新で金額は変わりますか?
A. 傾向として、更新間隔が長いほど上振れを主張されやすいですが、一律ではありません。契約条項と過去の合意が重要です。
Q. 相場を調べるときの注意点は?
A. 固定資産税評価だけで判断しないこと。
時価ベース×借地権割合を起点に、現地要因や過去の合意を必ず加味してください。