
越境解消や分筆、売買を「後戻りなく」進めるうえで最初に固めるべき土台が確定測量です。本稿は、親コンテンツ「隣接地からの越境物|トラブルを防ぐ完全ガイド」の基礎編として、実務で迷わない範囲に絞って要点を整理します。想定読者は売主・買主・オーナー・仲介担当・資金実行を控える担当者です。
確定測量とは
民法上の筆界(法的境界)を、関係者の立会いと合意に基づき地上で特定し、境界標により恒久化し、図面・座標で再現可能にする手続きです。公図や古い地積測量図は参考資料であり、単体では境界確定の根拠になりません。
必要になる典型場面
- 売却前の事前整備(境界未確定だと価格交渉・融資説明が難航)
- 分筆登記の前提(分ける線は筆界と整合している必要)
- 越境解消や覚書作成の前提(対象物の位置・範囲を特定)
- 造成・建築・融資・担保設定の基礎資料
基本の流れ
- 現地調査と資料収集:地番確認、登記簿、公図、既存図面、航空写真などを整理
- 関係者説明:隣接地所有者・共有者へ趣旨と工程を通知
- 立会い・境界協議:既存標の確認、境界案提示、異論の調整
- 境界標設置:杭・プレート等を適切な位置に永久設置
- 成果品作成:確定測量図(座標・距離・角度・写真付き)、合意書面の取り交わし
- 登記・後工程へ連携:分筆登記、覚書作成、売買契約条項へ反映
費用・期間の目安(レンジ)
- 費用:20〜40万円が目安(面積・隣接筆数・高低差・未確定の有無で増減)
- 期間:約1〜2か月(関係者の日程調整・異論対応で延びることあり)
※都市部の密集地、筆界未確定、相続未登記、越境の多発はコスト・期間の上振れ要因。
注意点(つまずきやすい論点)
- 公図=境界ではない:縮尺や誤差があり、現地優先の検証が必須
- 不在地主・連絡不能:公告や第三者立会い等、手続的補完を事前に計画
- 高低差・工作物:擁壁天端か基礎外周かなど「どこを線にするか」を立会いで明確化
- 写真と座標の整合:杭位置を写真・座標・距離で三重管理し、将来の再現性を担保
- 覚書との接続:成果図面を覚書の添付資料にし、対象範囲・再発条項を数値で固定
よくある誤解
- 「古い測量図がある=確定済み」ではない(立会い・合意の有無を確認)
- 「境界標が抜けた=境界も消えた」ではない(復元可能性が重要。座標・距離が鍵)
- 「座標が正しければ現地は無視できる」わけではない(現地標と整合して初めて有効)
依頼前チェックリスト(発注をスムーズにする最低限)
- 対象地の地番リスト/登記簿謄本/公図写し
- 隣接地の筆数と所有者連絡先(わかる範囲で)
- 既存の測量図・開発図・売買図面など過去資料
- 越境疑い箇所の写真と仮位置メモ
- 希望時期(売買・融資・分筆など後工程の締切)
関連リンク(導線)
- 分筆の流れと費用完全ガイド(確定測量→分筆登記→引渡しまで)
- 越境物撤去の費用と責任分担(確定測量結果を覚書・撤去範囲特定に活用)
- 隣接地からの越境物|トラブルを防ぐ完全ガイド(全体像に戻る)
まとめ
確定測量は「争点を数値と杭で固定する」工程です。立会いと合意に裏付けられた成果物があれば、覚書・撤去・分筆・売買・融資のすべてが短時間で整流化します。まずは隣接者の連絡網の把握と既存資料の棚卸しから始め、工程と期限を後ろの契約スケジュールに合わせて逆算しましょう。