

不動産売却の「申込」とは何か?
大阪市で不動産を売るとき、「内覧が終わったら、あとは買うだけ」と思われがちですが、実務ではここからが本番になりやすいです。仲介から「申込が入りました」と連絡が来た段階は、まだ売買契約ではありません。
申込は、買主が「この物件をこの条件で買いたい」と意思表示する書面(買付証明書など)で、価格だけでなく、引渡し時期、手付金の額、ローン利用の有無、付帯設備の扱いなどがセットで出てきます。つまり、申込=条件交渉のスタート地点です。
売却の全体像の中で、申込はどの位置か
流れをざっくり押さえると、次の順番です。
- 査定(相場と戦略を整理)
- 媒介(仲介会社を決める)
- 販売(広告・内覧)
- 申込(買主の条件提示)
- 契約(重要事項説明→売買契約→手付金)
- 引渡し(残代金決済・鍵の引渡し)
申込の段階では、買主はまだ「撤退できる」状態です。だからこそ、買主側は不安材料を見つけると、価格や条件で調整しようとします。売主側も、ここでの判断が最終手取りやスケジュールに直結します。
申込で出てくる条件の代表例
申込書に書かれやすい項目は次の通りです。
- 購入希望価格(いわゆる指値が入ることもあります)
- 手付金の額
- 引渡し希望日(「○月末まで」など)
- ローン利用の有無(ローン特約の期間)
- 付帯設備(エアコン・照明等)の扱い、現状有姿かどうか
- 境界・測量(戸建て・土地の場合に論点になりやすい)
マンション・戸建て・土地で論点は変わりますが、マンション特有で申込時に効いてくるのが「管理状況」です。その中でも交渉材料になりやすいのが、次の話です。
条件交渉で、積立金不足があると不利になりやすい
分譲マンションには、管理費と修繕積立金があります。修繕積立金は、外壁・屋上防水・給排水管・エレベーターなど、建物全体の大きな修繕に備えるお金です。
申込のタイミングで「積立金が足りていない(将来的に不足しそう)」と見られると、買主はこう考えます。
- 将来、積立金が値上がりするかもしれない
- 一時金(臨時徴収)が来るかもしれない
- 修繕ローンがあるなら、負担が長引くかもしれない
この「買った後の負担が読みにくい」という不確実さが、価格交渉や条件交渉に直結します。つまり、室内がきれいでも、立地が良くても、申込段階で急に指値が強くなることがあります。
積立金不足を理由に出やすい“申込側の要求”
買主側が出しやすい要求は、だいたい次の形です。
- 価格の調整:「将来負担分を価格に織り込みたい」
- 条件の厳格化:「ローン特約を長めに」「追加資料を確認してから契約したい」
- 日程の調整:「総会後に判断したい」「修繕の方針が見える時期に合わせたい」
ここで売主が「そんなの関係ない」と押し返すと、話が進まず、次の買主も逃しやすい。逆に、根拠を揃えて説明できると、必要以上の値下げを防ぎやすくなります。
不利を減らすために、申込前からやっておく準備
申込で強いのは、気合ではなく“資料と整理”です。特にマンションは、次を先に揃えておくと交渉が荒れにくいです。
- 長期修繕計画(できれば最新版)
- 総会議事録(直近1〜2年分の範囲が目安)
- 修繕積立金の改定履歴(いつ、いくら上がったか)
- 大規模修繕の実施状況(実施時期・内容・資金の手当て)
これらが揃うと、「不足かどうか」の言い合いではなく、「いつ・どれくらいの負担が想定されるか」を会話できます。買主の不安が具体化すると、交渉が現実的な線に収まりやすいです。
高く売りたい/早く売りたいで、申込の受け方は変わる
申込は、どれを飲むか・どれを切るかの判断です。優先順位で考えると整理しやすいです。
- 高く売りたい:根拠資料で不安を潰し、価格は簡単に動かさず、条件面で着地点を探す
- 早く売りたい:スケジュール重視で、多少の条件調整も織り込み、申込をまとめにいく
積立金不足が絡む場合は特に、「価格だけで勝負する」と消耗しやすいです。引渡し時期、付帯設備、手付金、条件の整え方で、実質的な損得が変わることもあります。
失敗しやすいポイント(申込で損しやすいところ)
- 価格設定:管理面の弱点があるのに強気で出し、申込で大きく下げてしまう
- 媒介選び:管理資料の扱いに慣れていない仲介だと、買主の不安を整理できず押し込まれる
- 書類の遅れ:議事録や計画が出せず、契約直前で止まりやすい
- 日程の見落とし:総会・修繕予定と引渡し希望が噛み合わず、条件が悪化する
費用の一般論(申込前に、手取りをざっくり把握する)
売却で動くお金は、申込の判断にも影響します。一般的には次の費用があります。
- 仲介手数料(成約時に発生。上限ルールあり)
- 税金(利益が出た場合の譲渡所得税。特例の可否で変わります)
- 諸費用(抵当権抹消などの登記費用、引越し、必要に応じて清掃等)
税金や特例の適用は個別条件で変わるため、最終判断は税理士・税務署・自治体等で必ず確認してください。
次に取るべき行動は1つだけ
申込で条件交渉に振り回されないために、まずは「管理・積立に関する資料(長期修繕計画、議事録、積立金の改定履歴)を揃えた状態で査定を取り、申込時の説明台本を作る」ことです。
査定のとき、仲介会社に次の2点を聞くと、申込対応の実力が見えます。
- 積立金不足を指摘された場合、どの資料でどう説明するか
- 値下げ以外の着地点(条件調整)の提案ができるか