概要
山林は、土地の購入と管理に焦点を当てた不動産の一形態です。一般的に広大な自然地域で構成され、自然との共生を重要視します。山林には異なる地目(林地、耕地など)が含まれ、その用途は多岐にわたります。
都市計画区域外の山林では、原則として建築に関する特別な規制がないため、自由に家を建てることができます。ただし、注意が必要です。なぜなら、ケースによっては依然として一定の制限がある場合があるからです。
そんな注意を必要とする山林ですが、このページを見ればほぼ何でも分かるように書きました。ぜひ、ご活用下さい。
山林の基本
山林とは
土地には「地目」と呼ばれるカテゴリーがあります。地目は、土地の用途を示すもので、全部で23種類があります。この記事では山林の地目に焦点を当てた山林を紹介します。その奥深い世界に一歩踏み込んでみましょう。
地目の各説明は以下よりご覧下さい。
https://rent.f-eden.co.jp/2023/11/18/%e5%9c%b0%e7%9b%ae/
- 田(農耕地で用水を利用して耕作する土地)
- 畑(農耕地で用水を利用しないで耕作する土地)
- 宅地(建物の敷地およびその維持・効用に必要な土地)
- 学校用地(校舎、附属施設、運動場など)
- 鉄道用地(鉄道の駅舎、附属施設、路線の敷地)
- 塩田(海水を引き入れて塩を採取する土地)
- 鉱泉地(鉱泉の湧出口とその維持に必要な土地)
- 池沼(かんがい用水でない水の貯留池)
- 山林(竹や木が生育する土地)
- 牧場(家畜を放牧する土地)
- 原野(雑草やかん木が生育する土地)
- 墓地(人の遺体や遺骨を埋葬する土地)
- 境内地(宗教法人法に掲げられる土地)
- 運河用地(運河法で定められた土地)
- 水道用地(給水のための水源地、貯水池、浄水場など)
- 用悪水路(かんがい用や悪水はいせつ用の水路)
- ため池(耕地かんがい用の水貯留池)
- 堤防(防水のために築かれた堤防)
- 井溝(田畝や村落間の通水路)
- 保安林(農林水産大臣が保安林として指定した土地)
- 公衆用道路(一般交通に供される道路)
- 公園(一般の娯楽のために供される土地)
- 雑種地(上記のどれにも該当しない土地)
山林の分類
山林は場所によって、純山林・市街地山林・中間山林の3つに区分されます。市街地山林は都市部に位置し、住宅地の影響を受ける山林を指します。例えば、住宅地内や住宅地に隣接している山林は市街地山林に分類されます。
一方で、純山林は都市から離れた地域に広がる山林であり、中間山林は純山林と市街地山林の中間に位置する山林を指します。
純山林
「純山林」は、市街地から遠く離れた山林を指します。一般的には、人里離れた自然が広がる山をイメージすることができます。こうした土地は、山林以外の目的に利用することが難しく、そのため相続税の評価においては、宅地の評価額にはあまり影響しません。
市街地山林
「市街地山林」は、市街地に位置する山林を指します。この場合、竹木を伐採し、造成することで宅地に転用できる可能性があります。そのため、純山林とは異なり、市街地山林の評価は異なる方法で行われます。
中間山林
「中間山林」は、その名の通り、純山林と市街地山林の中間に位置する山林のことを指します。この分類では、山林が人里離れている一方で、市街地の影響を受けにくい立地にあります。純粋な山林と市街地山林の特性を併せ持っており、用途や評価においても独自の側面を持っています。
魅力
自然との調和
森の中に広がる隠れた湖や美しい景観は、日常の喧騒を忘れさせてくれます。また、自然との調和は環境への配慮にも繋がります。
森林保護と持続可能な森林管理
山林は、森林保護と持続可能な森林管理の一環として位置づけられます。持続可能な森林管理は、木の伐採と新たな植林をバランスよく行い、森林の生態系を保護します。これにより、木材供給が安定し、環境への負荷を軽減することができます。
炭素吸収と気候変動の緩和
山林は、気候変動に対抗し、二酸化炭素の吸収を通じて環境に貢献します。森林は、二酸化炭素を吸収し、酸素を供給することで、地球の気候にプラスの影響を与えます。気候変動への貢献は、山林の価値を一層高めています。
未来の価値の増加
山林は、長期的な視点で行われ、将来の資産価値の増加を期待します。木材や土地の価値は時間とともに増加し、資産の価値が上昇します。これは、将来の安定した収益を保証します。
間違えやすい地目
原野との違い
原野と山林、どちらも自然が織り成す土地の一部ですが、微妙な違いが存在します。ここでは、それぞれの特徴と、その違いに焦点を当ててみましょう。
原野は、「耕作の方法によらないで雑草やかん木類が生育する土地」を指します。この定義から分かるように、原野は自然がそのまま広がる土地を指します。植物の種類や生育状況に特に拘束はありません。
一方で、山林も耕作目的の土地ではない点では原野と同じです。しかし、山林は「人の背丈を超えるような竹や木が生育している土地」を指します。この定義により、山林は比較的大きな樹木が茂り、森林としての性格が強調されます。
森林との違い
山林と森林は、見た目は同じように見えますが、不動産取引や住宅ローンの観点からは重要な違いがあります。ここでは、山林と森林の関係、そして地目に注意するポイントについて紹介します。
山林は、実は森林を指す言葉です。広大な地域に樹木が密集して生えているエリアを指し、森林とも呼ばれます。不動産の文脈では、「山林」という地目は、竹や木が生育する土地を指します。
登記記録にある地目は、その土地が登記された時点での状況を示しています。しかし、現地の実態と異なることがあります。整地されていて平らな土地が、登記上は「山林」になっていることもあるのです。特に、住宅ローンを組む場合には、地目の変更が求められることがあります。
固定資産税
山林を所有することの魅力の一つに、その固定資産税の安さがあります。小規模な山林であれば年間わずか数千円、大規模な山林でも数万円という驚きの金額で済むことが特徴です。
この驚くべき低さは、山林の評価額が1坪あたり数十円と非常に低いためです。実際の評価額は坪単位ではなく、平方メートル(㎡)単位で算出されますが、その金額が非常に抑えられているため、所有者は軽い気持ちで税金を支払うことができるでしょう。
ただし、例外もあるので詳しくは各市区町村へ聞くと良いでしょう。
事故や損害への賠償責任
山林所有者の法的責任とは?
山林やその他の土地に樹木が倒れたり、枝が張り出したりすることによって発生した事故には、法的な責任が発生する可能性があります。ここでは、個人が所有する山林における法的責任について詳しく見ていきましょう。
樹木の倒木や張り出しによる事故
所有する樹木が倒れたり、張り出したりして他人に事故が発生した場合、法律により「当該樹木の所有者が賠償責任を問われる」ことがあります。これは、所有者が樹木が他人に害を及ぼすことを事前に予測し、適切な対策を講じなかった場合に発生します。
土地の工作物による損害発生時の責任
また、土地に設置された工作物に瑕疵がある場合、例えば危険な状態にある建造物や施設が他人に損害を与えた場合、その工作物の占有者は被害者に対して損害を賠償する責任を負います。工作物の設置や保守には慎重な注意が必要であり、不具合があれば速やかに修復することが求められます。
個人が所有する山林や土地には、その維持管理に関する法的責任が伴います。樹木の倒木や土地の工作物に問題がある場合、速やかな対応と予防策の検討が必要です。法律のルールに則りつつ、安全な環境を提供することが、所有者としての責務となります。
メリットとデメリット
以下に山林を所有するメリットとデメリットをまとめます。
メリット
- 税制上の優遇: 山林の価値評価が低いため、固定資産税が割安になります。保安林や小規模な山林には固定資産税が不要です。山林の木々の売買や伐採に関しては、税金面で有利な山林所得が適用されます。また、山林の相続に際しては、不動産や土地など他の資産と比べて相続税が優遇されます。
- 資金制度に関する利点:国や地方公共団体、また林野庁から支援や補助を受けることができます。また、日本政策金融公庫の資金を活用して、林業向けの低利融資制度を利用することができます。さらに、林業や木材産業経営向けの無利子貸付制度も活用可能です。
- 敷地料収入:山林内に送電線や電柱がある場合、土地所有者は敷地料収入を得ることができます。また、送電線の下には「線下補償」があり、これにより線下補償料が支払われます。さらに、送電線や電柱の周辺にある木々は、電力会社が伐採するたびに補償金を得ることができます。
- 自然の中でのリフレッシュ:新しい雰囲気の空間を手に入れることで、休日に自分自身の世界を楽しんでリフレッシュすることができます。都会の騒々しさから離れることで、これまで見過ごしていた景色が見えるようになったり、家族とバーベキューや焚火をすることで、普段話せなかったことをじっくり話す機会も得られます。
- 資産の多角化: 経済が不安定になったり、他の投資が影響を受けた場合でも、山林は比較的安定した価値を持ち、投資ポートフォリオ全体のリスクを軽減する一翼を担います。また、木材の需要や土地の価値変動に連動して、将来的な利益も期待できることが特徴です。
- 施設運営:平地の多い山林を選べば有料キャンプ場運営やマウンテンバイクのトレイルコース設置など、アクティビティ施設の運営も考えられます。
- 持続可能な収益: 木材やしいたけなどきのこ類の販売、観光や狩猟料なども考えられます。持続的な経営手法により、長期的な利益をもたらします。山林は多様なビジネスチャンスを提供する、貴重な資産の一つです。
デメリット
- 自然災害: 山林は自然の要素にさらされており、火災、洪水、竜巻などの自然災害による損失がある可能性があります。
- 維持費用: 山林の維持には費用がかかります。道路や施設の維持、防火帯の整備、監視などが必要です。
- 不動産市場の変動: 不動産市場の変動は山林の資産価値に影響を及ぼすことがあります。不動産市場の波によって山林の価格も変動するため、リスク管理が重要です。
- 法的規制: 山林の所有と運営には地域や国による法的規制が存在し、これらの規制に従わなければなりません。新たな法律や規制の変更が、投資の条件に影響を及ぼす可能性があります。
- 長期投資: 山林投資は通常、長期的な視点で行われます。売却までに多くの年月がかかるため、資金を一時的に流動性の低い資産に投資することになります。
山林の土地は通常、非常に安価であり、そのため賃貸などからの収入を見込むことが難しいです。この事情から、山林の土地は不動産としての価値がほとんどありません。固定資産税が安い理由も、土地の価値が低いからです。
昔は山林所有者は裕福なイメージがありましたが、木材価格の下落に伴い、山林の価値も減少し、相続の際に問題を引き起こすことがあります。このような事態から、「負動産」と呼ばれることもあります。
山林の管理や木材の育成には、時間と労力が必要です。たとえば、スギやヒノキのような木材の育成には数十年以上の歳月を要し、間伐や枝打ちなどの手入れが欠かせません。
山林には自然災害によるリスクがあります。土砂崩れや倒木などのリスクが存在し、また不法投棄などもしばしば問題になります。また、都市計画法や森林法に基づく制約があり、一部の山林では建物を建てることができません。
山林を所有する際には、これらの様々な課題やリスクについて考慮し、慎重な計画が必要です。
相続時の注意点
山林を相続した場合、所有者として市区町村への届出が必要です。この手続きは相続後90日以内に行う必要があり、戸籍謄本や山林の位置を示す図面などの書類が必要です。
届出を怠ると、法に基づき10万円以下の罰金が科される可能性があるため、注意が必要です。できるだけ早く役所に連絡し、必要な手続きを進めましょう。これにより、法的なトラブルを回避し、円滑な相続手続きを行うことができます。
なお、山林の所有権を放棄することは認められていません。相続人全員が相続放棄を行えば山林は国庫に帰属しますが、相続放棄には条件がありますのでご注意ください。最後に相続放棄を行った人が「管理義務」を負い、最終的に山林は国のものになります(民法959条前段)。ただし、何もしなくても国が取得する手続きをしてくれるわけではないため、適切な手続きが必要です。
購入の流れ
山林を購入するための手順を簡単に解説します。これは不動産の購入手続きと似ていますが、山林特有の要因を考慮する必要があります。
目的の設定からエージェントの選定
山林の購入目的を明確にし、予算を設定します。用途、サイズ、地域、アクセス性などを考慮して目的と予算を決定します。
希望地域の山林市場を調査し、土地利用法、規制、地価、地目などを調査します。適切な場所を特定します。
不動産エージェントや不動産仲介業者を選び、専門家のアドバイスを得ます。地元のエージェントは地域に関する貴重な情報を提供してくれます。
物件の探索から価格交渉
エージェントの協力を得て、物件を探し、地形、状態、アクセス、周辺環境を評価します。現地調査が重要です。
選定した山林物件について、土地の評価と調査を行います。権利状態、境界、植生、地質、法的制約などを詳細に調査します。
価格交渉を行い、売主と合意します。エージェントのアドバイスを受けつつ、公平な価格を確保しましょう。
契約から管理
エージェントを通じて売買契約を締結します。契約には価格、引渡し日、条件、法的規制などが含まれます。
必要な融資を受け、資金を用意します。銀行や金融機関との連絡が必要です。
所有権移転手続きと法的許認可を取得します。土地登記、登記簿の更新、税金の支払いなどが含まれます。
契約条件を履行し、取引を完了します。買主は所有権を受け取り、山林が引き渡されます。
山林の管理と維持計画を立て、森林管理、安全対策、環境保護などを考慮します。定期的な点検と保守作業が不可欠です。
山林の購入は重要な投資であり、地域によって手続きや規制が異なることがあるため、地元の法的アドバイザーや専門家のサポートを活用することが重要です。これらのステップを確実に踏むことで成功に導くことができます。
管理と利用
山林の適切な管理と利用方法について詳しく説明します。持続可能な収益を上げるために生態系への配慮が重要です。
森林管理
山林を所有する場合、森林の健全性を保つために適切な伐採と植林を行います。これにより、木材資源を持続可能に活用し、同時に生態系に与える影響を最小限に抑えます。持続可能な森林管理原則に基づいて、森林の健康を維持し、将来の収益を確保しましょう。
木材収益
山林の主要な収益源の一つは木材です。木材の伐採や販売を通じて収益を得ることができます。木材の保存や加工にも注意を払い、市場価値を最大化しましょう。木材の需要と供給について常に市場トレンドを把握しましょう。
野生動植物保護
山林内の野生動植物の保護と繁殖環境の維持が重要です。狩猟や乱獲を規制し、生態系を保護します。生態系の多様性と安定性を維持するために、野生動植物の保護に投資しましょう。
農業と林業の統合
山林内で農業活動を行うことで、収益を多角化し、森林資源と農産物を組み合わせて提供します。例えば、果樹園や野菜畑を育て、地元コミュニティや市場に供給することができます。
観光リゾート
山林を観光リゾートとして活用し、環境に配慮したエコツーリズムを推進します。トレッキング、野生動植物観察、キャンプなどのアクティビティを提供し、自然との触れ合いを提供します。地元コミュニティと連携し、観光収益を地域に還元しましょう。
持続可能なエネルギー
再生可能エネルギーソースの開発を通じて電力と熱エネルギーを生産します。太陽光発電や風力発電などのプロジェクトを検討し、エネルギー供給の新たな収益源を確保します。
火災管理
火災は山林にとって大きな脅威です。火災管理計画を策定し、火災の発生を予防し、早期鎮圧を行うことが重要です。消火設備の整備や防火帯の設置など、予防措置を講じましょう。
法的遵守と規制順守
地元法律や規制を遵守し、許認可を取得します。土地の利用に関する法的制約に気を付け、所有権や運営に関する規制を順守しましょう。
これらの方法によって、山林の管理と利用を持続可能かつ収益性の高いものにできます。生態系への配慮と効果的な運営は、将来の成功につながります。
成功事例
以下は、実際の投資家が山林をどのように活用したかをいくつか紹介します。個人情報があるので細かくお伝えできないことをお許し下さい。
成功事例 1: 持続可能な森林管理
投資家Aは山林を購入し、持続可能な森林管理を実践しました。彼は伐採と植林をバランスよく行い、木材資源を最適に活用しつつ、森林の生態系を保護しました。結果として、木材収益が持続的に安定し、森林生態系も健康的に育ちました。
成功事例 2: 観光リゾートの推進
投資家Bは山林を観光リゾートとして活用しました。彼はトレッキングや野生動植物観察のアクティビティを提供し、環境への影響を最小限に抑えながら観光収益を上げました。地元コミュニティとの連携により、地域にもポジティブな影響をもたらしました。
成功事例 3: 再生可能エネルギーの生産
投資家Cは山林内で太陽光発電プロジェクトを展開し、再生可能エネルギーの生産に成功しました。これにより、電力供給への新たな収益源を確保ましたし、同時に環境への貢献を実現しました。
これらの成功事例から分かるように、山林投資は多様な方法で収益を生み出し、同時に環境保護や持続可能な経済活動に貢献します。これらの実例は、山林投資が個人やコミュニティにとってどれほど有益で多様な方法で活用できるかを示しています。
さらなるリソース
山林に興味を持ち、さらに学びたい場合、以下のリソースを参考にしてください。
山いちば
「山いちば」では、日本全国で山林の購入や売却、そして山林の売買の仲介を行っています。山林の価格は、土地と立木を別々に査定します。土地の査定では、地目や接道状況、地の傾斜などを考慮し、立木の査定では、樹種、樹齢、手入れ状況などを調査し、市場の木材価格を参考にして価格を算出します。
楽街の実践者コラム
元銀行員、現役大手不動産会社社員のアンダーズさんが書かれたコラムです。
https://www.rakumachi.jp/news/practical/227635
一生お金に困らない山投資の始め方
日本全国に数百の「山」を持つ不動産投資家。俗に、「山王」と呼ばれている永野 彰一さんが書かれた本です。